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サミナの話を練ろうの会(1)
2016/06/10(Fri)
 その日も変わらず、たのもお、という声がヘキサシティジムに響いた。
「ジムリーダー・コア! 手合せ願います!」
「……サミナちゃん。また君か」
 ほぼ毎日のように挑戦に来る白髪の少女サミナのことは、ジムリーダーのコアは既に見知っていた。
 お互い少しずつ変えた戦略でフィールドを支配し、たまにサミナが勝つ。同じ相手と何度も戦うことで学べることもあるのだが。
「君の実力はとうに認めたし、その証であるライザーバッジも渡した。君なら他のジムでだって互角以上に戦えるだろう。だってのに、なんでまた」
「そうですね、それでは、コアさんの友人であるトリシティジムのガリオンさんやテトラタウンジムのラルクさんと戦いたいです。次はいついらっしゃるんですか」
「いつって言われてもなぁ……次会うのはトリシティでだし」
「来られる時は話してくださいね!」
「多分、会いに行ったほうが早いよ。――サミナ。旅には出ないのか?」
 言われて、サミナは眉間に皺をよせた。
「ヘキサシティに居ればなんだってできるじゃないですか。それともなんですか、私を追い出したいんですか」
「それは飛躍しすぎだ。ジムリーダーには専門とするタイプってもんがある。俺は電気タイプのポケモンでしか相手できない。ミタマじゅうを周れば、いろんなタイプのポケモンに対応できるようになる」
「……それは、わかってますけど」
 いつもその先は答えない。やっぱり手合せしてください! とサミナが押せば、コアはジムリーダーの顔になって応じた。

 その日は四日ぶりの勝ちだった。
 センターでポケモンを回復させ、ふと町を眺める。
 人工島に生まれた娯楽の街ヘキサシティ。政治の中心であるペンタシティと双璧をなす、ミタマ地方の都市。
 ここに居ればなんだって手に入る。遊びやレジャーのネタだって尽きないし、ポケモンを鍛える施設も質が高い。
 そしてなにより――
「ミタマ地方在住民、サミナ――か?」
 背後から自分の名を呼ばれ、サミナは振り向いた。声の主の姿を見て、低い位置でくくったツインテールが跳ねる。
「あなたは……?」
 サミナは思わず、腰のモンスターボールをひとつ取った。
「サクハ地方砂の民、デイジ。祖先を同じくする同志だ」



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