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サミナの話を練ろうの会(6)
2018/10/16(Tue)
 汗がじわりと浮かぶ。ヘキサシティの夏とどちらが暑いであろうか。
 タオルで汗を拭うと、足下ではロゼリアが必死に風を送ってくれていた。
「ありがとロゼリア。大丈夫だよ」
「ローリ?」
 汲んできたアスラタウンのわき水で喉を潤すと、眼下の光景を改めて見る。ドーラン山のマグマは、カエンジシの炎と同じぐらいか、それ以上に深い赤をしていた。環境が合うのか、ここに来てからカエンジシはずっと元気だ。
「ワフッ!」
 そしてまた駆け出す。
「ま、待ってよー! って、わっ」
 バランスが後方に崩れ、サミナの視界が転じた。背後は下り坂だ。まずい……!
 ロゼリアとミノムッチの悲痛な声が聞こえる……しかし、痛まなければ滑り落ちることもない。
 何かに支えられているのか、これ以上こけないことを察し、胸をなで下ろし……たところ、
「マァ〜〜!」
 と声をかけられ、心臓が飛び出るほど驚いた。
「えっ……ポケモン?」
「間一髪だったな、お嬢さん。よくやった、ムウマージ」
 どうやらサミナの背後から支えてくれていたポケモンがいるらしい。サミナはそのポケモンと向かい合い、例を言った。
「ありがと。……めちゃくちゃびっくりしたけど」
「マァー」
「こいつはすぐ人を脅かしたがるからな。お嬢さん、ドーラン山ははじめて……って、え」
「ああ!」
 目の前に立っていたのは、ジムリーダー・コアの友人、テトラタウンジムリーダーのラルクだったのだ。暗い色のフードに隠れた目はいまいち感情を読み取れないが、口は笑っていた。
「お久しぶりです! サミナです。覚えていただいているでしょうか」
「会うたびにコアが話してくるから嫌でも覚えるさ」
 サミナは苦笑した。ラルクとコアは出会えばへらず口、そしてバトル。しかしそれも親しきことの証なのだとガリオンが言っていた。
「エーディア様の思し召しとはいえ驚いたな。旅を始めたのか」
「はい。まあ……色々あって。ここを越えたらラルクさんにも挑戦したいと思ってて……」
「へえ、光栄だな。それじゃあこれを」
 ラルクはリュック二つ分はありそうな袋をサミナに差し出した。
「これは?」
「灰袋。火山灰集めてみな。まあ俺からの軽いヒントだ」

 ラルクと別れてからも、サミナにはヒントの意図がわからなかった。しかし、カエンジシは乗り気のようで、火山灰の積もったところを見つけてはサミナを促す。灰袋につめるのはなかなか足腰に来る作業で、袋を引きずっていると、後ろからロゼリアとミノムッチが押してくれた。
「ちょ、いいって! 汚れちゃうよ」
 しかし、今日の二匹は、自慢のばらやミノが汚れても平気な様子だった。
「楽しいのかな……? 疲れたらすぐ私かカエンジシに乗るんだよ」
 そのまま休憩を挟みつつ火山灰を集め、中身が六分目に達したところで、カエンジシは足を止めた。
「カエンジシ? なにかあるの……おわっ」
 煙の向こうに見えたのは、天然温泉だった。入浴の文化で育っていないサミナはもちろん初見だ。ただ、ドーラン山の温泉は昔から戦士たちやポケモンを癒やしていたのだと学校で習ったことはある。
 サミナが早速手を浸そうとするとカエンジシに止められる。どうしたの、と声を掛けると、カエンジシは先に自分の前足を浸した。摂氏6000度の熱にも耐えられるカエンジシが、これは人間でも浸かれる水温なのか見てくれているのだ。
 カエンジシは頷いた。続いて場にいくつかあった温泉に順番に前足を浸し、ロゼリアとミノムッチを案内する。
「ありがとカエンジシ!」
 サミナは水着に着替えてお湯に浸かる。また汗をかいたが不快感はない。カエンジシは水温の高いお湯が気に入ったようで、少し離れたところで自らの身体を癒している。
 思い思いに温泉を楽しんだところで、サミナは仲間を集めて言った。
「みんな、今日は本当にありがとう。この火山灰がどうなるのかわからないけど……次の町ももうすぐみたいだし、ラルクさんのことだから何かあるはず。これからも頑張ってこ!」
「ガウ」
「ローリー!」
「ぷしゅう!」
 一行は、皆爽やかな顔色をしていた。



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