テルロは、目の前のサルビオとメガプテラを見比べて、思いを巡らせていた。
彼は、テルロの聞き間違いでなければ「シャラシティ育ち」だと言った。それならば、やはり出身地は――
「“ゴッドバード”」
テルロの思考を遮るように、サルビオがプテラに指示した。
目を閉じていても突き刺さるような鋭い光がプテラから発した。「溜め」が必要な技であるのだが、ただでさえ速いプテラがメガシンカすると、もはやほとんどのポケモンがその速さに及ばない。
ごう、と日時計に向かってプテラが飛んだ。その強烈なオーラにカエンジシとマグカルゴは怯むが、そのプテラを唯一止めたポケモンがいた。
「え……!?」
サルビオは目を見張る。サルビオ、そしてプテラの視線の先には、ずぶ濡れのサメハダーがいた。
「俺のサメハダーは“気合のタスキ”を持っている」
そう言ったのはザリストだ。ザリストは鮫肌で傷つかないように、慎重にサメハダーから宝珠を受け取る。宝珠は赤、青、そして黄色に輝いていた。
「サメハダーがついに見つけた」
ジンジャーとデイジーははっとした。これで必要なオーパーツはあと一つだ。そして、そのオーパーツは、おそらく。二人はメガプテラを見た。
「ヒャッコクの日時計の力を借り、最終兵器の眠る場所を見つける。……そして」
妹を見つけ出す。
フレア団の理想なんてどうでも良いザリストの目的といえば、それだけだ。
ザリストはみなまで言わなかったが、サルビオは目を見開いたまま、動けないでいた。メガプテラのメガシンカ状態が解除され、みるみるうちに元のプテラに戻る。その隙をついて、ニダンギルがプテラを襲った。
「サルビオ!」
テルロが叫んだ時には、ニダンギルは鋭利な刃先で、器用にプテラの持つ“プテラナイト”を奪いとっていた。
「甘いな」
サルビオ、どうしたんだ、らしくないぞ。
そう声をかけようと思っても、テルロにはできなかった。ヒャッコクの日時計が。――最終兵器が。
時刻は午後八時に迫っていた。ザリストは巾着袋から全てのオーパーツを取り出し、日時計に触れた。
「日時計よ、示してくれ。カロス史に残る「最終兵器」は、どこに!」
ザリストが言うと、ヒャッコクの日時計にぴったり入った夕日の光が屈折し、道を示した。
サルビオはなんとかそれを見ようとする。
「あの方向はシャラシティか? いや違う、もっと南の……」
日時計が示した方角は、セキタイタウンだった。
「セキタイ……? まさかそんな……」
そう言って、ザリストが絶望を表情に描いたのを、テルロは見逃さなかった。
「向かうしかないわね! まずはフラダリ様に報告よ!」
「よかったね、ボスが欲しがってた宝石が見つかって」
ジンジャーとデイジーは駆け出す。それを見て我に返ったザリストは、海に跳び込んだサメハダーに乗った。サルビオはプテラを呼ぶ。“ストーンエッジ”に“ゴッドバード”と、大きい技を二度も放ったプテラは疲労していたが、サルビオの声には応えた。
かくして、その場にはテルロとニンフィアのみが残った。
「ヒャッコクにあって、ミアレにないもの……」
日時計の光の中、テルロは空中のある一点をぼんやり見て、無意識のうちに呟く。
「夕日だ。こんなきれいな夕日、ミアレでは決して見られない……」
引き続きジンジャーさん、デイジーさんお借りしております。
131122
⇒NEXT