番人の家を出てからも、ステラは森にいるというニュートラルポケモンのことが気になっていた。
また、ロトの様子もいつもと違う。
「トック、トーック!」
「ん、どうした? ロト」
「トック!」
ロトは西を示した。そこだけ森の木が切れており、できた円形の空間には一本の大樹がある。
「何だあれ。不思議なところだな。行ってみるか」
大樹はステラが思った以上の大きさだった。両腕で囲っても、手に触れることができなかった。
「なんか不思議な力とかないのかな〜」
ステラは手のひらを添える。ロトもやってみろよ、と誘うと、ロトもそのようにした。
静かな風が吹き続ける。特に変化はない。
「何もないか」
ステラは手を離すが、ロトは触れ続ける。
「おーい、何もないぞ。……ん?」
ロトが触れているところから、ぼうっとした光が漏れる。
紫色で、角を持ったごつごつのポケモン。
「ニドキング?」
ロトはその光を見たままうなずいた。光の映像はだんだん鮮明になっていく。
ステラも、その光を食い入るように見た。
じきに眠り粉もまわり、ロトは眠ってしまったが、それでもステラの方を向き、自分が敵側になるよう倒れこむ。ウツボット
の攻撃をくらったのは、圧倒的にステラよりロトが多かった。
「ロト、これほんとにあったのか?」
ステラは訊くが、ロトは応えない。
悪天候となる中、眠ってしまった一人と一匹を助けたのがニドキングだった。
その太いしっぽに雷をまとって突進する。適わないと思った敵側は皆逃げてしまった。
ニドキングは次にステラたちの方を向き、光るしっぽを高く突き上げた。
それに気づいてか、あの番人の家にいたヨルノズクが飛来した。
映像はそこで切れた。
「ニドキング……ニュートラルポケモン、だよな」
電気のエネルギーを利用できるニドキング。薄い映像では輝きを確認できなかったが、間違いなくニュートラルポケモンだ。
「トック」
「ロト……眠り粉くらってまで、オイラを守ってくれて。ありがとうな」
ステラはロトをなでた。ロトは瞳を閉じて、主人の手の温もりを感じた。
次にステラは、今まで来た道を振り返った。
「おーい! ニドキング、聞こえるかー? ありがとなー!」
「トーック! トトーック!」
番人もこのことを知っていたのかもしれない。
会うことはできなかったが、ニドキングの姿はステラたちの心にしっかり刻まれた。
森はじきに終わって、平地が続く。ステラたちは、北西を目指して、また歩き始めた。
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